建築散歩in熊本 vol.2
家づくりの知識2022.09.06
新築住宅や外壁のリフォームでは、外壁材を何にするか迷う人も多いのではないでしょうか。「サイディング」と「ガルバリウム」はともに外壁材として人気がありますが、家に求めるものによって向き・不向きがあり、単純に見た目や価格だけで選ぶと失敗する可能性があります。両者はどのような特徴があり、どう違うのか。それぞれのメリット・デメリットを知り、最適な外壁材を選びましょう。
目次
−1.そもそもサイディングとガルバリウムって?まずは違いを確認
−2.サイディングを外壁に取り入れるうえで押さえておきたいポイント
−3.ガルバリウムを外壁に取り入れるうえで押さえておきたいポイント
−4.サイディングとガルバリウムはどのくらいの費用がかかる?
−5.サイディングとガルバリウムはどちらがおすすめ?
1.そもそもサイディングとガルバリウムって?まずは違いを確認
まずは、サイディングやガルバリウムとはどんな外壁素材なのか、それぞれの違いについて確認していきましょう。
1-1.サイディングは4種類!通常は「窯業系サイディング」を指す
サイディングとはパネル状の外壁材の総称で、モルタルに変わり日本の外壁材のトップシェアを誇ります。素材によって「窯業(ようぎょう)系サイディング」「金属系サイディング」「木質系サイディング」「樹脂系サイディング」の4種類に分けられ、それぞれ価格や仕上がり、特性が異なります。日本では窯業系サイディングが最も普及しており、一般的にただ「サイディング」と呼ぶ時は窯業系サイディングを指します。
窯業系サイディングはセメントをベースに木製繊維などを配合した原料を釜で高温処理し、プレスしてパネル状に形成した外壁材です。新築の戸建て住宅で広く採用されている外壁材であり、建売住宅の外壁はほとんどがサイディングになります。木質系サイディングは、戦前の戸建て住宅によく見られる木張りの外壁が該当します。プラスチック製の樹脂系サイディングはアメリカで広く普及しているものの、日本ではまだ珍しい素材になります。
1-2.ガルバリウムは金属サイディングで使う鋼板を指す
トタンに変わってシェアを伸ばしている金属製の外壁材が、金属系サイディングです。金属系サイディングは金属製の板(鋼板)をパネル状に形成した外壁材で、そのうちガルバリウム鋼板という金属でできたものが「ガルバリウム」と呼ばれています。ガルバリウムは1970年代にアメリカで開発された、鉄板に金属メッキ加工を施した素材で、アルミニウム55%・亜鉛43.4%・シリコン1.6%の割合で吹き付けているのが特徴です。
現在では窯業系サイディングに次いで採用される外壁材であり、軽量で耐久性が高いことからリフォーム市場ではトップシェアを誇ります。壁材としてはもちろん、屋根材としても使用されています。
2.サイディングを外壁に取り入れるうえで押さえておきたいポイント
日本で広く普及しているサイディングですが、すべての家に適しているというわけではありません。サイディングを外壁に取り入れる上で、知っておきたいメリットとデメリットを説明します。
2-1.サイディングのメリット
サイディングのメリットは、安価でデザイン性が高く、耐震性や耐火性といった機能面でも優れている事です。サイディングはカラーバリエーションが豊富で、レンガ調や木目調といったデザインも本物と見劣りしないクオリティに仕上げることができます。アンティーク風や北欧風など、デザインにこだわりたい方でも満足のいく仕上がりになるでしょう。販売しているメーカーが多く、工場生産のため品質も安定しています。
また、専門的な施工技術を必要とせず、短い施工期間で完成します。材料費や人件費が安く済むため、他の外壁材と比べて初期費用を安く抑えることができます。ポピュラーな外壁材なので施工できる工務店も多く、実績をもとに業者を選べるのもメリットと言えるでしょう。一方で、セメントが主原料のサイディングは耐震性や耐火性にも優れています。建築基準法で定められた防火性能試験に合格しており、不燃材料としても認められています。耐火性を問われる地域でも、外壁材として使用する事ができます。
2-2.サイディングのデメリット
サイディングのデメリットとして、耐久性の問題やメンテナンス費用が高くつく事が挙げられます。きちんと手入れすれば40年以上使用できますが、10年程度を目処にメンテナンスが必要になります。サイディングボードの主原料であるセメントには防水性がないため、防水性の高い塗装を施す事で補っていますが、防水塗装の剥がれや色褪せを防ぐために定期的な塗り直しが必要になります。サイディングボードの隙間はシーリング(充填剤)で埋めていますが、目地に施したシーリングが劣化してひび割れや破損が目立ち始めたら、隙間から雨水などが侵入する前に補修が必要です。
古くなったサイディングボードが反り返りやひび割れを起こすと張り替えとなりますが、窯業系サイディングの張り替え費用は他のサイディング材に比べて高額になります。また、主原料のセメントは耐火性には優れるものの、熱を吸収しやすい性質も合わせ持っています。季節や色によっては、外壁材の表面温度が60度を超える場合もあります。外壁の温度が上がると室内にも熱が伝わるため、エアコンが効きにくい事も考えられます。それなりに重量があるため、築年数の古い中古物件のリフォームに使うと負荷がかかるといったデメリットもあります。
2-3.機能性がアップしたサイディングも登場している
サイディングは各社が機能向上を目指して開発を進めており、耐久性がアップし、メンテナンスが少なくて済む商品も増えています。サイディングの弱点ともいえるシーリングの劣化の早さに着目し、継ぎ目を少なくしてシーリングを減らした商品や、シーリングをまったく使用しない商品も出ています。汚れを浮き上がらせ、雨で流れるようにした商品など、サイディングボードのメンテナンスを軽減してくれるタイプも人気です。フッ素などでコーティングされた退色や汚れに強い商品、光触媒により紫外線の力で汚れを分解してくれるセルフクリーニング機能が付与された商品もあります。遮熱性の塗料を塗ることで、断熱性を高めたものも出ています。ただし、高機能なほど価格も高くなる傾向にあるので、予算に合わせて選ぶようにしましょう。
3.ガルバリウムを外壁に取り入れるうえで押さえておきたいポイント
ガルバリウムはどのような家の外壁に適しているのでしょうか。ガルバリウムを取り入れる上で、知っておきたいメリットとデメリットを説明します。
3-1.ガルバリウムのメリット
ガルバリウムは金属の一種ですが、アルミニウムや亜鉛によるメッキ層が腐食やサビを防いでくれるため、サビに強く耐久性に優れています。トタンの数倍の寿命があり、きちんとメンテナンスすれば20年、30年と使用する事もできます。雨に濡れるほど錆びにくいという不思議な性質で、水をかけて丸洗いすれば汚れも容易に落とす事ができ、メンテナンスも簡単です。窯業系サイディングと比べると、隙間が少なく防水性に優れているため、雨漏りしにくいというメリットもあります。冷害に強いので、寒冷地方の外壁材としても推奨されています。また外壁材は軽量なほど地震の際に家にかかる負担を抑える事ができますが、ガルバリウムは他の素材と比較してもとくに軽量なため、耐震性も高いといえます。
3-2.ガルバリウムのデメリット
ガルバリウムは他の外壁材と比較して、商品価格や工事代がやや高めです。施工にも専門的で高度な技術を必要とするため、依頼できる業者は限られてきます。カラーは選べますが、窯業系サイディングに比べるとデザインのバリエーションが少なく、見た目は好みが分かれる所です。モダンでシックなデザインに仕上げるには向いていますが、金属的な質感や安っぽさが気になるという人も少なくありません。
オシャレに仕上げるには他の外壁材と組み合わせてデザイン性を持たせるなど、工夫が必要になります。また表面が衝撃に弱く、傷や凹みが付きやすいデリケートな素材でもあります。金属の中では錆びにくい素材ですが、傷が付いてメッキが剥がれた部分は錆びやすくなりますし、塩害のリスクから潮風の当たる海沿いの地域の外壁材にも向きません。防音性能や断熱性もないので、断熱材などで補う必要があり、その分コストがかかります。
3-3.ガルバリウムはリフォームにもよく用いられる
ガルバリウムは、リフォームの分野でとくに重宝されている外壁材です。30年、40年と築年数を重ねた建物は家の基礎部分にも傷みや歪みが生じています。モルタルや窯業系サイディングといった重さのある外壁材でリフォームすると、傷んだ基礎部分には大きな負担がかかってしまいます。ガルバリウムは軽量なので、古くなった基礎部分にも負担が少なくて済みます。外壁材の張り替え工事には、古い外壁材を撤去してから新しい外壁材を取り付ける「張り替え工法」と、古い外壁材の上から新たな外壁材を重ね貼りする「カバー工法」があります。ガルバリウムは軽さを生かしてカバー工法で仕上げる事が可能なため、既存の外壁材の処分費用がかからず、リフォーム代を安く抑える事ができます。外壁材が一新されるため、外壁塗装とは違い、外観のイメージを様変わりさせる事もできます。
4.サイディングとガルバリウムはどのくらいの費用がかかる?
サイディングは、モルタルやタイルなど他の外壁材に比べてローコストです。しかし4種類の素材によって、サイディングは費用に幅があります。分かりやすく、1平方メートルあたりの費用で比較してみましょう。樹脂系サイディングはメーカーや施工業者が限られており、高いものでは9,000円程度、無垢材を使用する木質系サイディングでも8,000円程度と高額になります。一方で価格が比較的安く済むのが、窯業系サイディングと金属系サイディングになります。窯業系サイディングの相場は4,000円~5,000円程度となっており、最も費用を安く抑える事ができます。これは材料費や人件費、工事費などがトータルで安価なためです。金属系サイディングのガルバリウムでも4,000~6,000円程度なので、価格重視で選びたい方にはオススメです。
5.サイディングとガルバリウムはどちらがおすすめ?
外壁材をサイディングとガルバリウムのどちらにするか迷っているなら、見た目や築年数、メンテナンスの手間で選ぶといいでしょう。窯業系サイディングは、外壁のデザインにこだわりたい人や初期費用を抑えたい人、新築住宅の外壁材としておすすめです。色やデザインが豊富で、タイル調やレンガ調、木目調、石柄なども再現する事ができ、オシャレな外壁に仕上げる事が可能です。ただし、定期的なメンテナンスは必要になります。ガルバリウムは、デザイン性にあまりこだわりがなくシンプルな仕上がりを好む人、耐久性やメンテナンスのしやすさを重視する人におすすめです。他にはないメタリックな質感を活かし、シックでモダンな雰囲気の外壁に仕上がります。外壁材の中でもとくに軽量なため、古い家の外壁をリフォームする人や、カバー工法で外壁のリフォーム代を安く抑えたい人にもガルバリウムはおすすめです。
それぞれの特徴をふまえて希望を叶える外壁にしよう!
安価で耐久性があり、耐震性も高いことから、サイディングとガルバリウムは外壁材として人気です。しかし、デザインやメンテナンスのしやすさなどそれぞれ異なる特徴があります。住んでいる地域の環境や築年数によって不向きな場合もあり、見た目だけで選ぶと失敗する場合もあります。メリットやデメリットを把握したうえで、希望を叶えてくれる外壁を選びましょう。
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